シンシアリー
一方、レティシアは、クリストフ宰相に紹介された諸外国の統治者の顔と名前を、その場でしっかり覚えた。
そして、「この方々が招待されたのは、エストゥーラ側が今後も交易を継続させたいからであり、相手国側も同様に思っているからに違いない」と見抜いたレティシアは、彼らから、その国の位置や国の特産物等をそれとなく聞き出しながら、頭の中ではその国の規模や、エストゥーラや近隣諸国にどの程度の影響力があるのかを正確に計算し、導き出していた。

彼ら―――近隣諸国の統治者たち、そしてエストゥーラの関係者―――は、アンドゥーラ公国が養蚕業で成功し、高品質で上等の絹製品を作っていることを知っている。
だが、レティシアがその発案者であり、功労者であり、影の中心人物であったことを、彼らは知らない。
何故なら、それは全て、レティシアの父であるゼノス大公の発案であり、ゼノスのおかげで成功した、ということになっているからだ。

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