シンシアリー
「ベイルさんって、ユーグのこと?」
「いいえ。ユーグのお父様、セイヴィアー・ベイルさんです。アンドゥーラでは騎士長官という役職に就いていて、民が安心して暮らせるよう、町の治安を護る事に尽くしてくれた方です」
「じゃあレティシアは、その人と離れてここに来るのが嫌だったんじゃない?」
「いいえ。残念ながら、ベイルさんは、こ・・お亡くなりになってしまいましたから」

両親を半年前に亡くしたコンスタンティンに、「(恐らく私の異母弟に)殺されました」とは言わなくても良いだろうと、レティシアは素早く判断した。

「あ・・そうだったんだ。ごめん、レティシア」
「いいんです。たとえ亡くなられても、ベイルさんは私を見守ってくださっていると信じているし、ユーグもいますから」
「そうだね」と言ったコンスタンティンは、少し顔をしかめた。

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