シンシアリー
「どうしました?」
「・・・そこまで互いのことを信頼し、大切に想う其方たちの事を、羨ましく思っただけだ。ユーグ」
「はい、国王様」
「僕は其方のことが怖い。だが信頼している。いや、其方は信頼できると、やっと思えるようになった。だから一つ、良い事を教えてやる。ここだけの話だぞ」
「はぁ、なんでしょう」
「其方がレティシアのことを護りたいと思っているように、レティシアは、其方の事を護りたいと思っている。レティシアがそう言っていた。それくらい其方のことを大切に想っているのだ。そういう人を護ることができて、其方は幸せ者だな」
「あ・・・はい・・」

・・・姫、いや、王妃様がそのようなことを・・・。

心の底から感激しているユーグは、静かに喜びを感じていた。

「ユーグ。僕のことは嫌いか?」
「いいえ。少なくとも貴方様は、王妃様と私の敵ではない、ということはハッキリしていますから」
「そうか・・・。ならば、僕のことも護ってくれるか?」と切実な口調で、訴えるように聞いてきたコンスタンティンは、国王ではなく、ただの10歳の子どもに見えた。
そんなコンスタンティンを安心させるように、精悍な顔に優しい笑みを浮かべたユーグは、「もちろんです」と答えたのだった。
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