シンシアリー
ユーグに「ごめんなさい、ごめんなさい!」とバッタのように頭を下げたり上げたりしながら謝り続けているのは、女中のイリーナ・マードックだ。
彼女は比較的新入りの召使で、年は16になったばかり。
遠縁の親戚にあたるプリヤンカ・デュ・ラスを頼ってエストゥーラにやってきたイリーナは、王宮で召使として働くことになった。

ここに来る前も貴族の館の召使として働いていたということなのだが・・・毎日何かしらドジを踏む、いわゆる「おっちょこちょいな女」である。
しかし、いつも笑顔で明るく、はつらつと働くイリーナのことを、レティシアはとても気に入っている。
わざとドジを踏んでいるわけではないし、そのドジに悪意は全く感じられない。つまり、裏表のない、純粋なドジっぷりなのだ。
それに、召使の中で一番若いイリーナは、レティシアと年が近いので気軽に話しやすい。
さらにイリーナは、子どもの扱いが上手い(というのが彼女の最大の長所かもしれない・・・)のか、コンスタンティンとも仲が良い。

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