シンシアリー
「雨が途中で止んで良かったですな」
「ほんとね。元々どしゃぶりでもなかったのは幸いだったわ。聖書も濡れずにすんだし」とレティシア姫が言ったとき、ユーグが持っていた聖書を、タイミング良く姫に渡した。

「ありがとう、ユーグ」
「いえ」
「・・なにか?」
「いえ、その・・姫様はそのお年で、もう聖書をお読みになっているんですね」
「なかなか面白いわよ」
「面白い、ですか。ハハッ」

屈託なく笑うユーグを見て、なぜか嬉しくなったレティシア姫も、つられるように一緒にクスクスと笑った。

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