シンシアリー
シャハール国王の怒声に、元老院の議員の何人かは首をすくめ、怒声を向けられた張本人であるクリストフ宰相は、体を思いっきりすくませながら「ひぃっ・・!」と小声で叫んだ。
それを合図にしたかのように、ガックリとうなだれたクリストフ宰相の両腕を、護衛騎士の二人が、それぞれ片方ずつ持つ。
先程「証拠品」としてプリヤンカから没収した毒入りペンダントは、レティシアが再度“没収”した。

「現に、マルセルをこちらへ使わせ、こちらも奴隷の一件を知っているのだぞと伝えると、おまえはかなり焦っていたと聞いた。愚か者め。我が国では、人間を奴隷にするために住まわせているのではない。そして、我が国側は人間を運搬するためにアゼルの運河を開通させることを許した覚えはない!」
「それは我が国も同じです、シャハール国王。運河は生活必需品の運搬のために使われるべきであり、毒薬や奴隷の運搬に使うことは、我が国では法律によって禁じています。クリストフ、おまえは重大な罪を犯した。よって、宰相の地位をはく奪する」

コンスタンティンの言葉を受けて、元老院の議員全員が「是!」と言って賛同した。

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