シンシアリー
レティシアの護衛騎士であるユーグが、すかさずレティシアの前に立ち、壁となってくれたため、レティシアはプリヤンカの醜態を見ずに済んだが、歩きながらもなお「失敗したのはあの小娘のせいよ!」「二人とも死になさい!」と叫ぶプリヤンカの恐ろしい声は、レティシアだけではなく、その場にいる皆に聞こえていた。

レティシアは、プリヤンカの方へと一歩踏み出したユーグを止める意味で、彼の腕をグッと掴んだ。
ユーグの右手は、剣の鞘を持っている。

「ダメよ、ユーグ」
「しかし・・」
「あの二人には他の形で刑が下るから」

とは言っても、自分を侮辱したために、ユーグが剣を抜こうとしたことが分かっているレティシアは、彼の頼もしい背中に向かって「ありがとう。私のために怒ってくれて」と小声で感謝した。

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