シンシアリー
「僕たちの結婚が無効になったからと言って、何もエストゥーラを出る必要はないんだよ?レティシア」
「それは分かっています。ありがとう。だけど、やはり私は出た方が良いと思うの」
「本当に行くのか?私としては、其方の聡明さを是非、新生ラビアラのために役立ててほしいのだが」
「ありがとうございます、シャハール国王。ですが、私の決意は変わりませんので」
「そうか・・・」

上手に誘いをかわされたシャハール国王は、落胆をあらわにした。

「アンドゥーラに戻るの?」
「いいえ。結婚は無効になったとは言え、私は正式に公家を出た身ですし。何よりあそこに私の居場所はないから。折角自由を与えてくれたコースチャの好意を、無駄にしたくないわ」
「だったらどこへ」
「ここより北上し、そして少し西へ行ったところにあるローマニア王国で暮らす予定よ」
「ねえ、レティシア。何も今すぐ行かなくても良いじゃないか。2・3日くらい休んでも・・・」

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