シンシアリー
ゼノス大公やレティシアの亡母・カサンドラ前公妃は、公邸で働く者たち全ての名前や、彼らがどんな仕事をしているかは知っていても、一人一人にねぎらいの言葉をかけるために自分の時間を割いたことはない。
ヘルメース公子につきっきりのアレッシア現公妃に至っては、女中・執事の全員の名前すら、いまだに覚えていない状態。公邸で何人働いているか、誰が働いているかなど、アレッシアにとっては「知らなくてもいいこと」なのである。
だからこそ、今まではレティシアのことを「母親を亡くした可哀想な姫様」という憐れみの目線で見ていた女中や、「ザッハルト家の第一女子故に、いつかこの地に災いを起こすかもしれない」という懼(おそれ)の想いから、レティシアに関わることを避けていた執事は、自分の娘のようにレティシアを可愛がるようになったのである。
ヘルメース公子につきっきりのアレッシア現公妃に至っては、女中・執事の全員の名前すら、いまだに覚えていない状態。公邸で何人働いているか、誰が働いているかなど、アレッシアにとっては「知らなくてもいいこと」なのである。
だからこそ、今まではレティシアのことを「母親を亡くした可哀想な姫様」という憐れみの目線で見ていた女中や、「ザッハルト家の第一女子故に、いつかこの地に災いを起こすかもしれない」という懼(おそれ)の想いから、レティシアに関わることを避けていた執事は、自分の娘のようにレティシアを可愛がるようになったのである。