シンシアリー
ゼノス大公は、困った顔でアレッシアを見、そしてレティシアを見てフゥとため息をつくと「よかろう」と言った。
姫の思ったとおりだ。

『ありがとう、お父様!ありがとうございます、公妃様』
『でも。ああ見えて、馬は凶暴になる時があるから。“不慮の”事故など起こさないよう、気をつけるのよ』

・・・おまえなんか、馬に蹴られて死んでしまえばいいのよ・・・!

『“不慮”はもちろん、“不運な”事故すら起きないよう、どうか祈っていてください、公妃様』

底意地悪く光る黒い瞳から、アレッシアの“心の呟き”をしっかり感じ取ったレティシアは、アレッシアをしっかり見据えてそう答えた。

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