シンシアリー
9歳のレティシア姫が乗馬を習うことは、やはりゼノス大公も不安だったのだろう。
もっとも信頼しているセイヴィアー騎士長官に、この件を一任した。

「いかがですかな?勉強の方は」
「面白いわ。最初は哲学だけだったのだけれど、先週からは、歴史や地理も習い始めたのよ」
「姫様の弾むお声の様子から、学ぶことを楽しんでいらっしゃるのがよく分かります」と言うセイヴィアーに、レティシア姫はフフッと笑って同意した。

そんなレティシア姫の気持ちが伝わったのか。
姫を乗せている子馬も、嬉しそうにヒヒンと嘶(いなな)いた。
今は、慣らすように周囲を「歩いている」状態な上、手綱はセイヴィアーがしっかり握っているので、何も危なくない。

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