シンシアリー
「しかしまた何故、“乗馬を習いたい”と」
「・・“こんな境遇にいる貴女様だからこそ、できることが必ずあるはずだ”と、以前私に言ってくれたこと、ベイルさんは覚えてる?」
「はい、覚えております」

レティシア姫は、横にいるセイヴィアーをチラッと見て微笑むと、またすぐ前を見た。

「それで、私だからできることは何だろうと考えて得た答えは・・・“知ること”だった」
「知ること、ですか」
「そう。知ること。アンドゥーラという国にはどんな花が咲いているのか、どんな作物が取れるのか。街に住む民は、普段どんな暮らしをしているのか。一人で馬に乗れるようになれば、あちこち見に行くことができるでしょう?そうすれば、国や民の現状を知ることができるわ」
「なんと・・・!」
「地理や歴史を学んでいるのも、それが主な理由よ。地図は大方読めるようになったから・・」
「な、なんですと!?」
「どうしたの?ベイルさん」
「今、姫様は、地図は大方読めると・・・」

・・・地読(ちどく:地図を読むこと)は大人の男でも大変な作業だというのに。しかし、姫様の知能があれば、たとえ幼くとも納得がいく・・・。

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