シンシアリー
「ええそうよ。さすがに、描くまではまだまだなんだけど。でも地図が読めるということは、地形を知ることに、ひいてはアンドゥーラという国を知ることにつながるでしょ?」
「姫様は一体・・・現状を知って、どうなさるおつもりですか」
「女子である私には、成人しても政治的権限が与えられないことは分かってるわ。異母弟のヘルメースが、お父様の後を継ぐことも分かってる。でも、私が学んで得た知識が、いつか、どこかで役に立つときが来るかもしれない。だから私は学んでいる。そして、姫という立場から自国を知ること、ここで暮らす民の現状を、自分の目で見て知っていても・・いいえ、知っておくべきだと思うの。国民が、より豊かに暮らせるために。皆がアンドゥーラの国民であることを、誇りに想うために」
「姫様・・・」
「そろそろ行かない?ベイルさん」
「あっ」

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