シンシアリー
9歳のレティシアから感じる、姫としての存在感に圧倒されていたセイヴィアーは、いつの間にか子馬を止めてしまっていたのだ。
それすら姫に言われて気がついたセイヴィアーは、「そうですな」と言って、またゆっくりしたテンポで子馬を歩かせた。

・・・やはり。
姫様には君主となるに相応しい素質がある。そして器もある。
もしかすると姫様のそれらは、ヘルメース公子よりも上回っているかもしれない・・・。

仮にセイヴィアーの推測が正しくても、レティシア姫が言ったように、姫が大公の後を継ぐことは、ない。
しかもザッハルト家の女子は、結婚をすれば公家を出ることになる。つまり「姫」ではなくなるということだ。
それが、姫の才能を無駄に潰すような気がしてもったいなくもあり、悲しく想うセイヴィアーだった。

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