シンシアリー
「ちょっと、大丈夫なのユーグ・・?」
「大丈夫ですよ姫様。騎士に怪我はつきものです。それにあの程度では“怪我”とも言えません」
「そう・・」
「倅は15になりましたが、背ばかり伸びて一向に筋肉がつかない。訓練はどうにかこなしているようですが、いつもあのザマで。国境警備隊に選ばれたのが不思議でなりません。果たして本人の言うように“立派な騎士”になれる日が来るのやら」
「まあ。何を見当違いなことを言ってるの?今のはベイルさんらしくない発言だわ」
「え」
「ベイルさん。ユーグは“立派な騎士になれる”んじゃない。彼はすでに、立派な騎士よ。少なくとも私の目には、そう見えているわ」
「姫様・・・」
「ユーグが“立派な騎士になる”と宣言したあの日から、彼はすでに、立派な騎士なのよ」
「いやはや・・・。またしても私は姫様に言い負かされました。やはり皆の所へ行きませんか?姫様の突然の来訪に、皆喜ぶと思いますが」
「いいえ。遠くから見させてもらっただけで十分よ。さあ、行きましょうベイルさん。私たちのやるべきことをしに」
レティシア姫とセイヴィアーは、ユーグが立ち上がるのを見届けると、再び目的地に向かって走り出した。
ユーグは、二人が通りがかったことに、もちろん気づかなかったが、もしかしたら「がんばって、ユーグ」という姫の心の声は、聞こえていたかもしれない―――。
「大丈夫ですよ姫様。騎士に怪我はつきものです。それにあの程度では“怪我”とも言えません」
「そう・・」
「倅は15になりましたが、背ばかり伸びて一向に筋肉がつかない。訓練はどうにかこなしているようですが、いつもあのザマで。国境警備隊に選ばれたのが不思議でなりません。果たして本人の言うように“立派な騎士”になれる日が来るのやら」
「まあ。何を見当違いなことを言ってるの?今のはベイルさんらしくない発言だわ」
「え」
「ベイルさん。ユーグは“立派な騎士になれる”んじゃない。彼はすでに、立派な騎士よ。少なくとも私の目には、そう見えているわ」
「姫様・・・」
「ユーグが“立派な騎士になる”と宣言したあの日から、彼はすでに、立派な騎士なのよ」
「いやはや・・・。またしても私は姫様に言い負かされました。やはり皆の所へ行きませんか?姫様の突然の来訪に、皆喜ぶと思いますが」
「いいえ。遠くから見させてもらっただけで十分よ。さあ、行きましょうベイルさん。私たちのやるべきことをしに」
レティシア姫とセイヴィアーは、ユーグが立ち上がるのを見届けると、再び目的地に向かって走り出した。
ユーグは、二人が通りがかったことに、もちろん気づかなかったが、もしかしたら「がんばって、ユーグ」という姫の心の声は、聞こえていたかもしれない―――。