シンシアリー
レティシアの的確且つ鋭い質問に、先生は驚きながらも答える。
先生ですら答えに窮してしまった時には、他の生徒たちが代わって「答え」の議論を交わす。
成績はいつも最上位であるレティシアのことを、共に学ぶ彼らは一目置いた。
それでいて姫のことを、優しく護るように接したのは、恐らく、学校内で最年少である姫を見ていると、「彼女を護らなければならない」という保護本能のようなものをかき立てられるからだろう。
それは「大公の娘だから」という義務感から来ているのではなく、「レティシア・ザッハルト」という一人の女子が発する雰囲気に対して作用するものだ。
おかげで姫は、学校生活を大いに楽しむことができたし、「友」と呼べる者も、たくさんできた。
レティシアにとってそのことは、学んで知識を得て賢くなることよりも大きな喜びであり、学校という場で、他の若人と一緒に学ぶ最大の利点でもあった。

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