シンシアリー
何人かの生徒は、先生の言ったとおり、ドアを開けた外から、中を覗き込むように見た。
そして「うわ!これベッド?」とか「汚いなぁ。今は誰も管理してないんだな」等、思った第一印象をそのまま言っている。
そんな中、レティシア姫もザッと中を見ると、すぐに先生のところへ引き返した。
興味がないのではない。
姫のヘーゼル色の瞳がキラキラと輝いている様子から、逆に興味津々な様子がうかがえる―――。

「先生。このような建物は、ここにしかないのですか?」
「そうだねぇ。私が知っている限りではここだけだよ。但し、25年前に起こった東の隣国・ウェストワイクとの戦い時には、貴族の屋敷や空き家が、当時の大公様――だから君のお祖父様に当たるのかな―――の命により、怪我人の臨時収容施設になったはずだ」
「成程・・」
「なかなか良い案だとは思わないかね?」
「ええ。先生のおっしゃる通り、とても良い案だと思います。でも、戦いが起こらないことの方が、より大事だと思います」
「うむ、そうだね」

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