シンシアリー
「それは、医療の知識が不足していたこと。そして病人を収容する施設がなかったこと。この2つのおかげで、死ななくても良い人々までもが死に至りました。ですからこの教訓を活かして・・・」
「ということは、あなたはまたこの国に、流行り病がやって来るとでも言いたいの?」
「可能性は、いつでも十分あります」
「そうよねぇ。何と言っても、あなたがザッハルト家の第一子として生まれたのですから」
「アレッシア」
「あらごめんなさい。わたくしとしたことが、つい」

アレッシアはレティシアに、一応謝罪の言葉を口にはしたが、全然心がこもっていないどころか、妖艶な顔には笑みを浮かべている。
それをゼノスは「美しい顔だ」と思い、レティシアは「意地悪な気持ちがそのまま顔に出ている」と、冷静に分析する。

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