シンシアリー
アレッシアの言い分は、ゼノスにも分かる。―――ただし、レティシアの提案は、自分の利益につながらないことだから反対しているという、アレッシアの本心までは気づいていなかったが―――。
すぐにでも小屋を取り壊せば、余計な金を使わずに済む。効率も良いはず。
だが長い目で見れば、レティシアの意見も一理あることは、国を統治している大公であれば分かることだ。

・・・さて。どちらを“得”と見るべきか。
私は大公として、誰のために職務を全うすべきなのか・・・。

最終的には国と国民のためになることだと判断をしたゼノス大公は、レティシアの提案を取り入れて、南西部にある小屋を綺麗に整え直し、長期的な治療を要する病人の療養所とした。
これが後年、「サナトリウム」の原型となる。

そしてレティシアが発案したように、医学を学ぶ生徒たちが、授業の一環として、療養所で看護の手伝いに行くことで、彼らの医療技術も飛躍的に向上した。
これは後に、医者と看護師という職業が生まれ、さらにその後、街中に診療所が誕生し、さらに後年には、病院が誕生することにつながった。

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