シンシアリー
エイダはいつも、レティシア姫の来訪を歓迎した。
姫は、エイダが台所で食事の準備をしている間、続きにある食卓の椅子に座って本を音読することが、新たな楽しみの一つになった。
エイダのハミングと姫の声が交差する。その傍らで、エイダが作っているスープの匂いが漂ってくる。
そんな二人の姿を見るたびに、セイヴィアーのいかつい顔には、自然と笑みが浮かぶ。

・・・「至福のひと時」とは、このことを言うのだろうな・・・。

そうして姫は、彼らの誘いに乗って、夕食を共にする。
いつも「ありあわせの肉と野菜、時には豆も加えて作った」スープに、時々パンがつくという、とても簡素な食事ではあるが、食後にはいつも、デザートとして果物――大半が近くの森で実っているもの――が登場した。
そこで初めて食べた、甘いが少々酸味がある赤黒いクワの実に、少しだけ蜂蜜をかけたものが、のちに姫の好物となる。

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