シンシアリー
「大丈夫だよ、カサンドラ。其方が案ずることはもうないのだ」
「え。で、でも、あなた・・」
「其方が子を産めないのであれば、他の女が後継ぎを産めば良いだけの話であろう?」
「そんな・・・!」

・・・捨てられる・・・。
子を、男子を、跡継ぎを産むことができないばかりに、わたくしはもう、公妃ではなくなる。
ゼノス様の妻では、なくなる・・・。

絶望のあまり、生きる気力を失ってしまったカサンドラは、病床に伏してしまった。
そしてゼノスが側室から黒い瞳と髪が魅惑的な、若く美しい女性・アレッシアを自分の正式な愛人として公邸に迎え入れた時点で、カサンドラは自害した。

この時、レティシア姫はたったの4歳。
その頃からアンドゥーラの国民は、レティシアのことを「可哀想な姫様」と呼ぶようになった―――。

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