シンシアリー
「・・・姫様」
「・・・ユーグ・・・?やっぱりあなたはユーグなのね!」
「はい。お久しぶりです、姫様」

ここへは衝動的にやって来たユーグだったが、レティシア姫に再会の挨拶をする時には、右手の平を腹部に当てて腰を折る、礼儀正しく伝統的な騎士のお辞儀をすることは忘れなかった。

「4年ぶりの再会ね」
「4年?9年ぶりでは」
「実は4年前に一度、あなたを見たことがあるの。あなたは北部の国境警備隊に所属していて、ちょうど訓練中だったわ」
「あぁ。そのことなら父から聞きました。あの頃の僕は、“ヒョロヒョロ”があだ名になるくらい背ばかり伸びて、筋肉もつかず、騎士としての技術もなかなか向上せず、このまま騎士の訓練を続けてもいいのかと思い悩んでいました。でも、姫様が父に言ってくれたあの言葉のおかげで、僕は前に進むことができたんです」
「私はただ、思ったことを言っただけ。それと、私はあなたが立派な騎士であると信じていた。そしてあなたは、あなた自身が立派な騎士であると信じ続けた。それだけよ」

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