お前の涙、俺だけに見せて
prologue
お母さんが初めて倒れて、入院が決まったのは、私が高校に入学して数日後だった。
憧れの高校生活を、と思っていたんだけど、お母さんのお見舞いの日々が続いて、まだ放課後に友達と遊んだことがない。
私が放課後遊びに行くってことに憧れを抱いていたことを、知っているお母さんはもうしわけなさそうにしてたんだけど、これくらい、なんてことはない。
私がお見舞いに行かなかったら、お母さんのお見舞いに行く人はいないしね。
私は一人っ子だし、父親は私がまだ小さいときに亡くなったんだって。
「西野さん。お母さんのことについて、話したいことが……」
お母さんが入院して一週間が経ったころだった。
お母さんの病室を出たら、お母さんの担当医さんに引き止められた。
私は先生の背中について行く。
着いたのは、小さな部屋。
白い壁に、部屋の真ん中にテーブルがあって、その周りを四つの椅子が囲んでいる。
部屋に入ると先生が椅子に座り、私はつられるかのように向かいの席に腰を下ろした。
先生の斜め後ろには看護師さんが立っている。
すると、お母さんのお兄さんが部屋に入ってきた。
まさか来るなんて思っていなかった私は、挨拶をすることができなかった。
一方、向こうもなにも言わず、私の隣に座った。
「大変申し上げにくいことですが……西野詩織さんの命はあともって二ヶ月と思われます」
「……え?」
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