お前の涙、俺だけに見せて
その言葉からして、彼女は千秋の元カノ。
そして、千秋に未練あり。
……勝てる要素、なし。
「知るか。フッたのはお前だろ。つーか、今さらより戻せるとか思うなよ?」
「……どうして」
彼女の顔が険しくなる。
「今、俺が好きなのは花だけなんだよ。お前に気持ちは一つも残ってない」
「……私のほうが可愛い」
うん、さっきと言ってること逆だね。
事実だから、なにも言わないけど。
「俺からすれば、花のほうが可愛い」
待って、千秋の言葉もおかしい。
ますます口が挟めなくなってるんだけど?
すると、彼女が言い合いを聞くしかなかった私を見てきた。
「あなた……花だっけ。セン君は私が奪い返すから」
彼女はそれだけを言って、人混みの中に消えていった。
「……セン君」
あの子、千秋のこと、そう呼んでた。