お前の涙、俺だけに見せて
翌朝、二人分の弁当をきちんとカバンに入れて、家を出た。
教室に着くと、三神君はもう来ていて、たくさんの人に囲まれていた。
早いうちに渡したほうがいいと思って、カバンから三神君の分の弁当を取り出したけど……
どうしよう……
また、昨日みたいにみんなの痛い視線を集めたくないし……
「ちょっと、邪魔なんだけど」
出入り口でぼーっとしていたら、後ろから来た女子生徒に背中を押された。
すると、手に持っていたはずの弁当箱を落としてしまった。
「あ……」
弁当は横になってしまった。
もう中身はぐちゃぐちゃだよね……
「千秋ー。今日は遊べるよねー?」
隣のクラスの彼女は私が落とした弁当に気付かず歩いたため、弁当を蹴った。
……もう、確実に人に渡せるようなものじゃなくなったよ。
「あ、蹴っちゃった。ごめんね、西山さん」
そう言った彼女に、睨まれた。
「……いえ」
西山じゃなくて、西野だ、なんて否定する気もなく、私はおとなしく床の上に転がっている弁当を拾おうとした。
「西野だよ、そいつの名前」