お前の涙、俺だけに見せて
「それでも、千秋はなにも言わなかった。気付いてないフリをしてたんだ。んで、まあいろいろあって、椛雪菜のほうから千秋をフッたってわけ」
そのいろいろのところが聞きたかった。
でも、だいたいのことはわかった。
……はず。
でも、これは椛さんが嫌われるのも無理ない。
「みんな、千秋のことが大切なんだね」
少し整理ついて出てきた言葉は、これだった。
すると、二人は揃って照れた。
「中学からのダチだし」
「嵐士が大切な人は、私も大切にしたいから」
いい関係だなあ。
「千秋、愛されてるね!」
なんだか、私まで嬉しくなっちゃった。
「うるせえ、バーカ」
千秋のこれって、実は照れ隠しなんじゃないかって、最近思うんだよね。
絶対目、逸らすし。
すると、野澤君の携帯が鳴った。
「うわっ、最悪……悪い、ちょっと」
野澤君はそう言って私たちから離れた。