お前の涙、俺だけに見せて
話は聞こえなかったけど、野澤君の表情は確認できた。
なんとなく、怒ってるような……
「嵐士……」
麗もそう感じたみたいで、不安そうにしている。
「あいつでも怒ることあるんだな」
どこに感心してるのかな、千秋君。
まあ、普段の野澤君からは想像できないっていうのも、わかる気はするけど。
「ごめん、俺帰るわ」
「なんで?女?」
麗、そう切り替えたか。
「違うよ。ちょっと家の事情。また埋め合わせするから」
野澤君はそう言って、麗の額にキスをした。
麗の顔はあっという間に赤く染まった。
てか、見てるこっちまで恥ずかしくなる。
「じゃあな」
野澤君は慌ただしく帰っていった。
そして、麗が一気につまらなそうになったため、ダブルデートはお開きとなった。