お前の涙、俺だけに見せて
椛さんは必死に逃げようとしてるんだけど、男の力に適うはずもなく。
どうしよう……
助けたほうがいいのかな……
「花?帰ってなかったのか?」
どうするか迷い、立ち止まっていたら、千秋が背後から話しかけてきた。
走ってきたのかな?
予想以上に戻ってくるのが早い。
「それが……」
私は人混みを指さす。
「あれ、真ん中にいるのって雪菜か?」
……ぐさり。
幼馴染なんだから予想はしてたけど……
やっぱり下の名前を呼び捨て、か……
私は言葉が出なくて、首を縦に振っただけだった。
「まあ、放置で」
「え!?」
放置って……
本気で言ってる?
「なんで驚いてんの。ここで関わったら、向こうの思うつぼだぞ?」
いや、そうなんだけどね?
鈍感な千秋なら助けるかなー、なんて思ってたから……