お前の涙、俺だけに見せて
「あの腹黒女なら自分で切り抜けるだろ、あれくらい」
なんか、いつも以上に口が悪いような気がしますよ、千秋さん。
とか思いつつも、心の底でホッとしてる自分がいるんだよなあ。
「行くぞ」
私の不安がわかってたのか、千秋は私の手を取り、足を踏み出した。
それも、恋人繋ぎってやつ。
「あ、セン君!助けて!」
せっかく幸せ気分に浸ってたのに、椛さんの叫びでそれは壊された。
こんなふうに言われたら、さすがの千秋も無視できなかったみたいで、足を止めた。
そして、思いっきり不機嫌そうに、その集団を見つめる。
もしかしたら椛さんを見たのかも。
俺に助け求めるな、的な意味で。
でも、自分たちが睨まれたと思った男子生徒は、一目散に逃げていった。
中には先輩もいただろうに……
一年に睨まれただけで逃げるのはちょっと……
「ありがとう、セン君」
椛さんは上目遣いで、千秋にお礼を言った。
それなのに、千秋は返事しなかった。
それどころか、私の手を引いて進み始めた。