お前の涙、俺だけに見せて


まさか私が呼びかけるなんて思ってもみなかったのかな。


椛さんは目を見開いていた。



「彼女、私と約束があるんです。また別の機会にしていただけませんか?」



私は勇気を振り絞り、椛さんと男子生徒の間に入った。



「お前、いつもあの男と帰ってた……」


「いつも無視してんのに、今日は用あるんだ?」



それを言われたら、返す言葉がない。



「今日はこの子を待ってたの。いつもはセン……男の子のほうを待ってたけど」



すると、背後からそんな言葉が聞こえてきた。



どうやら、見切り発車の私の嘘に、助け舟を出してくれてるみたい。



「ふーん」


「じゃ、またねかわい子ちゃん」



椛さんの言葉で納得してくれたのか、男子生徒は解散し始めた。



なんとなく、私たちの間に気まずい空気が流れる。



「……なんで助けたの」



私は椛さんの質問に、すぐに答えられなかった。


素直に、同情だと言ってしまうのは、違う気がしたから。



「頼んでない」


「うん、頼まれてない」

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