お前の涙、俺だけに見せて
「……可愛くない」
知ってますとも。
椛さんほどの美少女前に、可愛いなんて言えるわけない。
「でも……ありがと」
空耳かと思ってしまうくらい、小さな声だったけど、しっかり私の耳に届いた。
私は自然と笑みがこぼれる。
「あ、セン君」
椛さんの視線は私の後ろに向いていた。
振り向くと、千秋が立っていた。
「結局、花が先に折れたか」
千秋は私の頭に手を乗せた。
てか、千秋はこうなること予想してたってことかな。
「……花さん、いい人だね」
「実感したか」
椛さんは小さくうなずく。
対して千秋は、なぜか勝ち誇った笑顔を見せた。
「あーあ。いろいろやって別れさせようと思ったのになあ。まあ、セン君が花さんを溺愛してる時点で、横取りなんてほぼ不可能だけど」
椛さんはどこか寂しそうに言った。
もしかして、椛さんはただ単に、千秋と話がしたかっただけなのかな。
「千秋、少し椛さんと話してきたら?」