お前の涙、俺だけに見せて


「……可愛くない」



知ってますとも。


椛さんほどの美少女前に、可愛いなんて言えるわけない。



「でも……ありがと」



空耳かと思ってしまうくらい、小さな声だったけど、しっかり私の耳に届いた。


私は自然と笑みがこぼれる。



「あ、セン君」



椛さんの視線は私の後ろに向いていた。



振り向くと、千秋が立っていた。



「結局、花が先に折れたか」



千秋は私の頭に手を乗せた。



てか、千秋はこうなること予想してたってことかな。



「……花さん、いい人だね」


「実感したか」



椛さんは小さくうなずく。



対して千秋は、なぜか勝ち誇った笑顔を見せた。



「あーあ。いろいろやって別れさせようと思ったのになあ。まあ、セン君が花さんを溺愛してる時点で、横取りなんてほぼ不可能だけど」



椛さんはどこか寂しそうに言った。


もしかして、椛さんはただ単に、千秋と話がしたかっただけなのかな。



「千秋、少し椛さんと話してきたら?」

< 120 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop