お前の涙、俺だけに見せて
そう思った私は、自分でも予想外の言葉を口にしていた。
「……は?なに言ってんの、花」
「そうよ。お人好しがすぎる」
二人してそういうことを……
素直にお礼言ったらいいのに。
「二人とも、すれ違ったままでいいの?」
すると、椛さんは呆れたようにため息をついた。
「本当、花さんには適わないわ」
そして、二人は学校の近くにある公園で話すことを決めた。
結局、私は一人下校。
「余計なお世話、だったかなあ……」
空を見上げると、分厚い雲が太陽を覆っていた。
二人の会話が気にならないと言ったら、嘘になる。
でも、邪魔する権利は自分でなくした。
大人しく帰るしかないんだ。
「すみません。西野花さんですか?」
流れる雲を見つめながら歩いていたら、前からそんな声が聞こえてきた。
その声の主に視線を移すと、スーツを着た男性が立っていた。