お前の涙、俺だけに見せて


「そう、ですけど……」



警戒してるからか、変な日本語になった。



「あなたのお父様からお手紙です」



でも、男性は気にすることなく、胸ポケットから茶封筒を取り出した。


そこには角張った字で花へ、と書かれている。



「あの、私のお父さんは……」



私はそこまで言って、千秋のお母さんの言葉を思い出した。



私のお父さんは生きてるって。



「……どうも」



私が封筒を受け取ると、その男性は一礼して付近に停めてあった車に乗って帰った。



一人にされた私は、封筒の中身が気になったけど、先に帰ることにした。



まだ千秋は帰ってなくて、私は自分の部屋に直行。


ベッドにカバンを置き、その隣に腰を下ろした。


そして、封筒を開けてみる。



『花



詩織が亡くなったと聞き、いてもたってもいられず、こうして手紙を書いています。


今まで父親としての役割を放棄していたから、こんなことを言える立場ではないことはわかっている。


だが、これはお父さんの願望でもある。

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