お前の涙、俺だけに見せて
「弁当交換するだけなのに、なに緊張してんだよ」
頭上から三神君の笑い声が聞こえてきた。
私はなぜかほっとして、顔を上げた。
「弁当箱はいつ返してくれてもいいからね」
それだけを言うと、私は廊下側の一番後ろにある自分の席に着いた。
「西野」
放課後になり、お母さんのお見舞いに行こうと、カバンを肩にかけると、三神君に呼び止められた。
「弁当、うまかった。今まで食べてきたものより、全然」
「ありがとう。そんな大したものじゃないけどね」
弁当箱を受け取ると、カバンに入れずにそのまま持って帰ろうとした。
「西野は昼、どうしたんだ?」
「え?」
まだ会話が続くなんて思ってなくて、声が裏返った。
「いや、あの蹴られた弁当を食ったのかと」
……なかなかに鋭いな、三神君。
「食べてないよ。購買でパンを買ったの」
「そっか。俺のせいで迷惑かけたな」