お前の涙、俺だけに見せて


「お、下がったね。授業戻れそう?」


「はい」


「じゃあ、これ」



私は先生に渡された紙を持って、教室に戻った。



保健室でもらった紙を授業担当の先生に渡し、席につく。



すると、前の席から手紙が回ってきた。



『大丈夫か?』



千秋からだった。



前を見たら千秋と目が合う。


私は小さく頷いた。


すると、千秋は優しく微笑み、前に向き直った。



その顔があまりにかっこよかったから、私は一人で頬を赤らめていた。



放課後は買い物をせず、まっすぐ家に帰った。



千秋は心配してくれたけど、料理を作るとは言わなかった。



慣れた手つきで二人分の夕飯を作っていたら、お姉さんがやって来た。



「どうかしたんですか?」


「んー、ちょっとね。あ、私食べてきたからいらないよ」



お姉さんは私たちが食べ終えるまで、テレビを見ていた。



「じゃ、千秋片付けよろしく。花ちゃんは部屋にレッツゴー!」

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