お前の涙、俺だけに見せて
すると、ノックの音がした。
返事しようと思ったら、ドアが開いた。
「千秋、丁度いいところに。花ちゃん、ここ出てお父さんと暮らすって」
「は?」
……え?
私はお姉さんに口を塞がれてたから、口を挟めなかった。
お姉さん、なんで思いっきり嘘を……?
「どうする?」
「どうするっつっても……花がそう決めたなら……俺は」
千秋はなにかを堪えながら言っていた。
そんな姿を見て満足したのか、お姉さんはお腹を抱えて笑った。
「嘘だよ、嘘!花ちゃんはお父さんじゃなくて、千秋を選んだよ」
「バカ姉貴……!変な嘘ついてんじゃねーよ!」
千秋は顔を真っ赤にして、お姉さんに言った。
この場合、怒りというより恥ずかしさで顔を赤くしたのかな。
「騙されやすね、千秋。あー、笑った」
お姉さんは落ち着きを取り戻したけど、千秋の怒りはまだ残ってるみたい。
「ねえ、千秋……もし私が本当にお父さん選んでたら、どうしてた?」