お前の涙、俺だけに見せて


すると、ノックの音がした。


返事しようと思ったら、ドアが開いた。



「千秋、丁度いいところに。花ちゃん、ここ出てお父さんと暮らすって」


「は?」



……え?



私はお姉さんに口を塞がれてたから、口を挟めなかった。



お姉さん、なんで思いっきり嘘を……?



「どうする?」


「どうするっつっても……花がそう決めたなら……俺は」



千秋はなにかを堪えながら言っていた。



そんな姿を見て満足したのか、お姉さんはお腹を抱えて笑った。



「嘘だよ、嘘!花ちゃんはお父さんじゃなくて、千秋を選んだよ」


「バカ姉貴……!変な嘘ついてんじゃねーよ!」



千秋は顔を真っ赤にして、お姉さんに言った。



この場合、怒りというより恥ずかしさで顔を赤くしたのかな。



「騙されやすね、千秋。あー、笑った」



お姉さんは落ち着きを取り戻したけど、千秋の怒りはまだ残ってるみたい。



「ねえ、千秋……もし私が本当にお父さん選んでたら、どうしてた?」

< 132 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop