お前の涙、俺だけに見せて
私は千秋がお風呂に入ってる間に、お父さんに連絡してみる。
「はい、相馬です」
電話の向こうから、男の人の声。
これが、お父さんの声……
そう思うと、妙に緊張する。
「西野です。西野花」
「ああ、花か。返事……決まったのか?」
すると、お父さんの声が柔らかくなった。
「はい……私……」
それでも、内容が内容だから、私の緊張は消えなかった。
「ん?」
「私、お父さんとは暮らせません」
こういうことははっきりと言ったほうがいいと思って、言ったんだけど……
私たちの間に沈黙が流れる。
「……そうか、わかった。なにかあったらいつでも頼ってくれていいからな?」
沈黙を破ったお父さんは、変わらず優しかった。
「ありがとうございます。ごめんなさい」
「謝らなくていいさ。ただ……一度だけ、直接会いたいんだが、週末空いてるか?」
会うくらい、問題ないよね。
「空いてます」
私がそう答えると、お父さんじゃない、女性の声が聞こえた。