お前の涙、俺だけに見せて


「仕事中ですか?」


「ああ、そうだよ。週末空いてるって言ったな。また詳しいことは連絡するよ」



お父さんはそう言って、電話を切った。



お父さん、優しい人だった。


どうして、手紙を読んだだけで自分勝手な人だって判断したんだろうと、反省してしまう。



「花、風呂空いたよ」



すると、千秋が髪を拭きながらリビングに来た。


やっとここ最近、この色気にも慣れてきたなあ。


それでもドキッとさせられるけどね。



「わかった。あのね、今週末お父さんに会ってくる」


「ん、そっか」



千秋は軽く私の頭に手を置いてから、キッチンに向かった。



「水?」


「自分でやるから、花は風呂入れ」


「はーい」



そして私は千秋の言うことに従って、お風呂に入った。



お父さんと会う、か……


なんとも言えない気持ちが溢れる。



いろいろ考えていたせいで、私は初めて長湯してしまった。

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