お前の涙、俺だけに見せて
「よし。これで結納ができるな」
「……え?」
私、緊張のあまり聞き間違えた?
今、結納って……
「俺が勤めている会社の社長の息子さんが、花のことを気に入っているらしくてな。この結納がうまくいけば、俺は昇進、花は玉の輿だ」
そんなの、まったく嬉しくない。
千秋以外の人と結婚なんて、したくないよ。
でも、嫌とは言えない雰囲気で、私は黙ってついて行くしかなかった。
着いた会場は、またまた高級店。
レストランで、天井にはシャンデリア。
異空間すぎて、夢でも見てる気分。
そして、私たちはウェイトレスさんの案内で個室に向かう。
「嫌っつってんだろーが、このクソ親父!」
部屋の前に来たと思えば、そんな叫び声が聞こえてきた。
というか、この声。
聞いたことあるような……
ないような?
「失礼します」
そんな中、容赦なくドアを開けるウェイトレスさん。