お前の涙、俺だけに見せて
三神君はもうしわけなさそうに、目を伏せた。
あれは、三神君のせいじゃないのに。
「……私、誰かのために料理を作ったの、久しぶりでね。すっごく楽しかったから、嫌な思いはしてない」
「でも、弁当をダメにされたんだぞ?」
三神君に渡すための、ね。
「自分の料理は帰っても食べれるから、本当に気にしないで?まあ、材料費がもったいないなー、と思ったけど」
「じゃあ、わかった。今日の放課後、なにか奢る」
「本当!?」
思わず三神君に近寄りすぎてしまった。
「そんなに奢られるのが嬉しいか?」
三神君は笑いをこらえながら言った。
おかげでなんだか冷静になった。
「ううん、放課後に誰かと寄り道出来るのが嬉しいの。いつもお母さんのお見舞いに直行してたから」
すると、三神君はなるほどと言わんばかりに頷いた。
「今日も行くのか?」
「行くよ。いつ様態が急変するか、わからないからね」
余命は二ヶ月あるけど、一瞬たりとも気が抜けない。
お母さんとの別れが来るまで、一日も欠かさずお母さんに会っておきたい。
「だとすると、デパートに行く暇はないな」
「そう……なるかな」