お前の涙、俺だけに見せて


「さすがに、今日はふざけんなって思ったけど」


「麗とデートの約束してたんだよね?」


「花ちゃん、なんでも知ってるね」



野澤君は苦笑した。



まあ、麗本人から電話がありましたから。



「遊園地の埋め合わせ、今日にしてたんだ。それをまたあの親父は……!」



野澤君、相当怒ってるなあ。



でも、これは麗のことを本当に大事にしてるからこそ、だよね?


そう思うと微笑ましくなる。



「なんだかんだ言って、野澤君は麗一筋だね」


「当たり前。せっかく手に入れた俺だけの姫、手放せないし」



カッコいい……!


私もそんなセリフ、言われてみたい!



千秋、言ってくれないかなあ。



「まあ、それは置いといて。問題はどうやってこの話をなかったことにするか、だ」



置いてていいのかな。



「本人同士が嫌って言ったら終わりじゃないの?」


「それで終われるほど、金持ちの婚約は緩くないんだよね。政略結婚しか頭にない」



知りたくない現実をありがとう。

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