お前の涙、俺だけに見せて
「金持ちは無条件に人が寄ってくるんだよね」
それを抜きにしても、野澤君はイケメンだから、人が寄ってくると思う。
なんて、余計な口出しはしなかったけど。
「勝手に、気に入られたらいいことあると思われてさ。でも、それって上辺だけでしょ?そういうの抜きで、俺のこと見てほしかったんだよね」
なんか、野澤君らしい理由だなあ。
「麗にも言ってなかったんだよね?」
「それはタイミング失ったのと、家族仲が悪かったから、紹介したくなかったんだよ」
後者については、ノーコメントで。
「さてと。そろそろ親父たち呼ぶか」
野澤君は立ち上がり、お父さんたちを呼びに、個室を出た。
ていうか、なんかやっぱり意外だったなあ。
野澤君の家がお金持ちなんて。
野澤君の言動からも、全然想像できないもん。
すると、野澤君がお父さんたちを連れて、部屋に戻ってきた。
「二人の時間は楽しめたか?」
席に着くなり、野澤君のお父さんはそう聞いてきた。
「婚約はなしになったよ」