お前の涙、俺だけに見せて


「金持ちは無条件に人が寄ってくるんだよね」



それを抜きにしても、野澤君はイケメンだから、人が寄ってくると思う。


なんて、余計な口出しはしなかったけど。



「勝手に、気に入られたらいいことあると思われてさ。でも、それって上辺だけでしょ?そういうの抜きで、俺のこと見てほしかったんだよね」



なんか、野澤君らしい理由だなあ。



「麗にも言ってなかったんだよね?」


「それはタイミング失ったのと、家族仲が悪かったから、紹介したくなかったんだよ」



後者については、ノーコメントで。



「さてと。そろそろ親父たち呼ぶか」



野澤君は立ち上がり、お父さんたちを呼びに、個室を出た。



ていうか、なんかやっぱり意外だったなあ。


野澤君の家がお金持ちなんて。



野澤君の言動からも、全然想像できないもん。



すると、野澤君がお父さんたちを連れて、部屋に戻ってきた。



「二人の時間は楽しめたか?」



席に着くなり、野澤君のお父さんはそう聞いてきた。



「婚約はなしになったよ」

< 144 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop