お前の涙、俺だけに見せて
ゆっくりと立ち上がり、おぼつかない足取りのお父さんの背中を、私は黙ってついて行くだけだった。
「ごめんな、花。この結婚が、花にとって幸せだと思って連れてきたんだが……」
車に乗ると、お父さんは弱々しい声で謝ってくれた。
「お父さんの気遣い、嬉しかったよ」
「ところで……今いる恋人が、俺と一緒に暮らせない理由か?」
「……うん」
私は言葉を濁しながらも、そう答えた。
事実だし。
「そうか……」
お父さんは肩を落とし、ため息をついた。
なんか、申しわけないことをした気分になる。
「花、もう一ヶ所だけ付き合ってくれるか?」
「うん」
もう、今の私には断る理由なんてなかった。
そして、連れてこられたのは古びた倉庫。
不良たちがたまり場として利用しそうな……
って思ってたんだけど、本当に不良がいた。
倉庫から出てきた集団は、迷わずお父さんに近づいた。
「これで頼む」