お前の涙、俺だけに見せて
「花、思う存分泣いていいぞ」
「え?」
どうしてそんなこと……
「バーカ。あれでバレてないとでも思ったか?」
いや、誤魔化せた自信はなかったけど……
千秋には隠しごとが通用しないし。
「どうせ人前で泣きたくないとか思ってたんだろ?」
図星です、千秋さん。
まあ、泣きたくないというより、お母さんに笑っていてほしいって言われたから、笑顔でいたかっただけなんだけどね。
「俺としても、花の笑顔は見たいけどさ。てか、涙はお前に似合わない、みたいなこと言ってみたいけど……」
漫画では、ヒーローがよくヒロインにそんなこと言ってるよね。
私も言われてみたいよ。
「でも、花の涙って意外と綺麗だからさ。誰にも見せたくないなら、お前の涙、俺だけに見せて」
その言葉とともに、一筋の涙が流れた。
てか、我慢しきれなくなったのもある。
千秋に言われたから泣いた、とかじゃなくて、こう……
気持ちが溢れ出た、みたいな。
そして、一度流れてしまえばもう止まらなくて、私は千秋の腕の中で泣き続けた。