お前の涙、俺だけに見せて
epilogue
あれから二週間経って、今日は千秋が退院する日。
実は、二週間の間に、お父さんが病院に来た。
千秋と私に謝りたいって。
許したくないって思ってたのに、千秋が許した。
大怪我させられたのに、どうしてそんなに簡単に許せるのか、わからなかった。
「許すかわりに、花は俺にください。てか、二度と近付くな」
千秋は怖い顔で、お父さんに言った。
許した理由は、あっさりとわかった。
「ああ、そのつもりだ。もう、俺には父親を名乗る資格もないからな」
お父さんはやつれた顔で病室を出ようとした。
「あの!」
その背中があまりに弱々しくて、私はつい、声をかけた。
ゆっくりとお父さんの顔が見える。
「……元気でね、お父さん」
私の名前の由来は、周りを癒せる笑顔の持ち主になってほしい。
私は今まで、お父さんに真逆のことをしてきた。
だから、最後だけでもその由来の通りの、笑顔で言った。
「……花もな」
お父さんは目に涙を浮かべ、そう言った。
「花お得意の和解だな」
すると、千秋がそう茶化した。
緊張していた空気は一気に軽くなり、お父さんに少しだけ、笑顔が戻った。