お前の涙、俺だけに見せて


そんなこともありながら、退院の日を迎えたわけですが。



私は病院には行かず、家で豪華な料理を作った。



「ただいまー」



千秋はお姉さんと一緒に帰ってきた。



でも、お姉さんは家には上がらず、そのまま帰った。



私が、今日は二人で退院祝いをしたいってを言ってたからなんだけどね。



「おかえり、千秋」



あの日、病院で泣ききったから、今回は心からの笑顔で迎えることができた。



久々の誰かとの食事は、とても楽しかった。



「そういえば、眠り続けてたとき、夢で花の母さんに会ったんだ」



食器の片付けが終わり、ソファに座っていた千秋の隣に座った。



「え?そうなの?」



お母さん、どうして千秋の夢なんかに……



「うん。約束守ってくれてありがとうって言われた」



……約束?



「花の母さんが死んだら、俺が代わりに花を守るっていう約束」



そんな約束、いつの間に……



あ、もしかしてあのとき?

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