お前の涙、俺だけに見せて
お母さんが私に飲み物を買いに行かせたとき。
わざとらしかったから、怪しかったのは怪しかったけど……
ていうか、そんな約束をしてたから、この家に呼んでくれたのかな?
なんて、考えすぎだよね。
そしてなにより、ここでお母さんの話題はずるい。
また泣きたくなってくる。
「花のお母さんは、俺が偽の恋人だって、知ってたんだ」
うん、そんな気はしてた。
だって、いきなり根拠もなく彼氏に会いたいなんて言うんだもん。
娘に彼氏がいるかなんて、どんな親でもわかるわけない。
「だからちゃんと、訂正してきた」
「訂正?」
「ああ。花は俺の愛する、本物の恋人ですってな」
ああ、もう……
千秋のバカ。
その言葉で、目頭が熱くなってきたじゃん。
「ダメだったか?」
「ううん。ありがとう」
そして、私は千秋とお母さんの温もりに包まれながら、そっと涙を流した。
《end》