お前の涙、俺だけに見せて
「はあ?」
「今日だけは、行けない」
「ふざけんな!西野のくせに!千秋の周りをうろついたりして……目障りなんだよ!」
彼女は怒りに任せて腕を振り上げた。
叩かれると思って目をつぶったけど、いつまで経っても痛みはない。
恐る恐る目を開けると、三神君が彼女の腕を掴んでいた。
「千秋……!」
「俺からしてみれば、お前のほうが目障りなんだけど。てか、お前は俺のなんなわけ?彼女でもなんでもねーんだから、俺の友人関係に余計な口出しすんなよ」
彼女はなにか言いたげにしたけど、言葉を飲み込んで逃げていった。
「怖かったぁ……」
なんとも言えない恐怖から解放されて、私はその場に座り込んだ。
「俺のせいで、また迷惑かけたな」
「ううん、大丈夫。行こっか」
スカートについた砂を払い、ローファーを履くと、三神君と並んで校門を抜けた。
「今日も一緒だなんて、相当仲がいいのね」
病室に入ったら、お母さんは微笑みながらそう言った。
お母さんの笑顔を見たら、私も嬉しくなるはずなのに、この件に関してだけは、どうしてもなれない。
嘘をついてるっていう、罪悪感のせいだとわかってるけど……