お前の涙、俺だけに見せて
「どうしても、俺が花さんと一緒にいたかったので、勝手について来ました」
照れながらそう言った三神君。
よくもまあ、こういう嘘を平気で言えるな……
って、私が言わせてるようなものか。
「じゃ、またねお母さん」
「あら、もう帰るの?来たばかりじゃない」
すると、お母さんは少し驚いたような顔を見せた。
私がいつも、お母さんに言われるまで帰ろうとしないからかな。
「今日は用事があるの。また明日来るから」
私は三神君と出かけたいがために、お母さんとろくに会話もせず、病室を後にした。
お母さんの寂しそうな顔は、しっかりと目に入っていたはずなのに、私はそれを無視してしまったんだ。
「よかったのか?あんな態度とって」
階段を降りていたら、三神君が聞いてきた。
「だって……」
お母さんよりも三神君を優先したかった、なんて誰にも言えない。
だから、私は口ごもってしまった。
「ま、お前がいいなら、俺はなにも言わないけどさ」