お前の涙、俺だけに見せて


お母さんが死んで、一週間が経った。


お葬式とかやるべき事は、全部お兄さんとおばあちゃんがやってくれた。



たった一週間で、一生分泣いた気がする。



そろそろ気持ちに整理がつき始めたから、家の整理を始めた。



本当は学校に行くべきなのに、まだ行けるような状態じゃなかった。



お母さんの引き出しを開け、中身を分別していたら、『花へ』と書かれた白い封筒が床に落ちた。



作業を一旦止めて、封筒を開く。



『花へ


この手紙が読まれてるってことは、お母さんはもう死んだんだね。


この手紙を書いたのは、自分の病気が治らないと知ったからです。


改めて、言うなんて照れてくさくて、手紙にしてみました。



お母さんが言いたいことは、なにがあっても笑顔でいてください。これだけです。


どんなときでも周りの人を癒せるような笑顔の持ち主になってほしい、という願いから、花と名付けました。


お母さんのせいで、その願いが壊れるのは嫌です。


辛いかもしれない。


でも、笑ってください。



私の分まで、しっかり生きてね。



花、大好き。


お母さんより』

< 19 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop